kiyosatoの謎備忘録

探索が苦手な年配夫婦二人の謎備忘録です。

ミステリーが大好き、謎解きは周遊と宿泊謎が中心です。

彼女が最期に憂えたこと 〜detective of the Victorian era〜

彼女が最期に憂えたこと 〜detective of the Victorian era〜

参加日 :2017/12/15

制作  :Project S.H

開催場所:八幡山ワーサルシアター


この公演はネタバレ解禁になっています。

 

1902年
前年ヴィクトリア女王崩御し新英国王の統治するかつてのロンドン。
街の治安を守る2つの組織は頻繁に発生する犯罪、溢れる娼婦の問題に振り回されていた。

 

ロンドンのほぼ全域を管轄する『スコットランド・ヤード』、1マイル四方の中心部を守り続ける『シティ』互いに衝突を繰り返す警察組織は、管轄の枠に捕らわれながらも信念を胸に事件と対峙する。

 

その年、シャーロック・ホームズは相棒のワトスンと共に街で起きる連続殺人事件の調査に乗り出すこととなる。
それは、ヤードとシティ、そしてホームズの三つ巴の中、語られる悲劇の物語。

 

 昨年はシャーロックホームズが登場してから130年でした。

それを記念して開催されたProject S.Hさんのシャーロックホームズ企画。

 

第一回公演が終了していた9月末にこの企画に気が付き「あぁー行ってみたかった!」と残念に思っていたのですが「第一回公演と言う事は第二回公演があるのでは?」と思いHPをチェックしていました。

 

そして10月に第二回公演のアナウンスが!チケット販売初日ににチケットをゲットしました。

 

半地下にある小さな劇場に入ると、舞台はビクトリア時代のイギリスの雰囲気。

狭い舞台ながらもかなり細部にまで凝った作りになっています。

 

まず、オープニングの群舞。

静かで少ない動きなのに、不安や不気味さを感じ、このあと起こるであろう凄惨な事件を予測させるオープニングでした。

 

ホームズのもとに一人の少女が訪れ、いまロンドンで起きている連続殺人事件、その被害者の一人である男性の事件を依頼される所から物語が始まります。

 

当時のロンドン警察は「スコットランド・ヤード」と「シティ警察」の縄張り争いが激しくヤードで起きた事件の犯人がシティに逃げ込んでしまえば、ヤードはもう手出しができない。そしてそれを悪用した犯罪が横行している状態でした。

 

 依頼を受けたホームズはヤードとシティで色々な人々に会い話を聞きます。

舞台が進むにつれて段々と連続殺人事件の裏側が明らかになります。

 

経営難になったある孤児院。閉院させないためにオーナーが取った手段は、孤児院の中で天涯孤独な少女を売春組織に売り渡し、その利益でその他の孤児を救うと言う悪魔のような所業でした。

 

一度は売春婦になりながらも、そこから這い上がり仕立て屋になった少女。

売春婦の生活から抜け出せずに酒浸りの日々を過ごす少女たち。

たくさんの孤児を救うためとは言え、少女を売春組織に売り渡してしまった事を悔やみ、悩むオーナー。

オーナーを上手く丸め込み少女売春を斡旋する貴族。

妹を売春組織に売り渡され、助けられなかった深い後悔を抱える兄。

 

色々な人々の思惑と苦悩、ヤードとシティの確執、それらが絡まって事件は混沌としていきます。

 

かなり重たいストーリーでした。

大雑把に言うと妹を売春組織に売り渡された兄の復讐劇です。

妹を思い売春を斡旋している貴族に復讐しようとしている兄、しかし妹はあの時の兄は自分を置いて逃げた卑怯者と思っています。

そして妹は、売春から足を洗い、平穏に仕立て屋で働いているように見えますが、心の底では自分を売春婦にしたオーナーと貴族を憎んでいます。

 

そして、この劇中で一番ないがしろにされていたのが、売春婦たちでした。

オーナーに裏切られ、貴族に売春婦として利用され、兄には殺人の片棒として利用され、そして必要が無くなったら切り捨てられる。

 

兄は妹を利用した貴族を憎んでいましたが、兄自身もやっていることは貴族と変わりませんよね。

気持ちがズン!と沈みそうな話ですが最後に少しだけ救いを感じられました。

 

事件の真相に迫り犯人をあぶりだすホームズ、でも彼はこの事件の部外者です。

結局、事件の根源を解決するのは当事者にしかできません。

ホームズはそのために事件を明らかにさせたのかなぁと感じました。

 

 今回、俳優陣の役作りがすごかった。

ホームズは本当にイメージ通りのホームズ。

ワトソンはイメージと違いちょっと軽いコミカルな感じでしたが、この舞台ではこのワトソンが適役でした。

イヴ役、儚げでありながら芯があり、でも心の不安定さを持つ難しい役を見事にこなしていました。

 

そして個人的に一番感情移入してしまった売春婦の二人。

自分たちは堕ちるところまで堕ちてしまって、もう表の世界に戻ることはできない、この世界から抜け出した妹のように思っているイヴに対し「自分たちのようになるな」と醜い態度をわざととっています。

自分たちは ”使い捨ての駒” だと人生を諦めてしまっている姿が切なかった。

 

最後に「彼女が最期に憂えたこと」の彼女は亡きヴィクトリア女王でした。

売春、殺人が横行していた時代、国の行く末を憂えた亡き女王との約束、その約束を守るためホームズはこの事件に一所懸命だったんですね。